交通事故の逸失利益の定期払い

報道でご存じの方もおられると思いますが、交通事故による逸失利益を、一括ではなく毎月定期払いで受け取ることを認める判決が最高裁で出ました。判決全文はこちらです。

逸失利益については、こちらのコラムでもご紹介しておりますが、事故がなければ得ていたであろう将来賃金等の賠償請求です。

通常、交通事故の損害賠償は、示談時や判決確定時にすべて一括で相手方保険会社に支払ってもらいますが、この場合、介護費用逸失利益については中間利息が引かれてしまいます。詳しくはこちらのコラムで記載しておりますが、この中間利息は、今年の4月まで、年5%で計算されており、4月以降でも年3%で計算されてしまいます。つまり、この低金利時代にもかかわらず、1年につき3%の利息が差し引かれてしまうということです。

今回判決が出された事件の場合、報道によれば、一括払いの場合、約1億4300万円が中間利息として引かれることになってしまうようです。

介護費用や逸失利益は、本来であれば将来にわたって、日々または毎月、具体的数字として確定するものなので、それを事前に一括で受領する以上、利息を差し引くというのが中間利息の考え方ですが、それであれば、事前に一括ではなくその都度受け取ることにすれば中間利息は差し引かれないということになります。

今回、相手方保険会社である損保ジャパンは、逸失利益をその都度、毎月受け取ることは許されないとして争ったようですが、最高裁は、損保ジャパンの不服申し立てである上告を棄却しました。

ただし、最高裁も、無制限に定期払いを認めたわけではなく、定期払いとすることが相当と認められる場合には逸失利益を定期払いとすることができると判断している点については注意が必要です。今回の事例の場合、被害者が4歳であるということや、回復困難な重度の障害を負っており、逸失利益が将来の長期間にわたるということが考慮されたようです。

上記のように、定期払いを選択すると、中間利息を差し引かれないというメリットはありますが、将来、後遺障害が改善した場合には賠償額が減る可能性があるため、相手方保険会社は定期的に調査を行うことになると思われます。そして、相手方保険会社が被害者の後遺障害は改善したと思えば、賠償額変更の裁判を起こすことになるので、実質的に紛争は長引くことになります。

最高裁が定期払いを認めたことによって被害者の選択肢は広がりましたが、その分、メリットやデメリットもありますので、お悩みの際は弁護士にご相談ください。

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